ホーム > 同窓会 > 俳句同好会 > 2022/10/08 第23回「蘇鉄の会」ご報告及び次回開催予告
(2022/10/09) 担当:長島 公子 (事務局、19期)
俳句同好会 第23回「蘇鉄の会」報告
この9月以降、連続して日本列島を襲う台風の合間の奇跡的な快晴の日となった令和4年10月8日(土)、「蘇鉄の会」は、東京都文京区後楽にある小石川後楽園の涵徳亭にて開催いたしました。
今回の投句参加者10名(含む講師)。句会参加者8名。投稿句全40句。
選者及び講師 城下洋二氏の略歴:愛媛県出身。黒田杏子主宰「藍生」俳句会会員。俳人協会会員。藍生新人賞、藍生賞受賞。句集「銀杏坂」
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虫の音の寄せくる坐り机かな
明月草雨の小道をふさぎをり
糸瓜忌を過ぎて小さき糸瓜かな
溢蚊の血を吸ふでなく止まりけり
城下 洋二
令和四年十月
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【選句と選評】 城下洋二 講師
≪兼 題≫
「虫」一切
<特選>
虫の音の止みて庭より夫帰る 孝枝
夜の散歩か朝帰りか、夫婦の間のドラマを感じさせる。
<並選>
夜更けて耳鳴りのよう虫の声 良
虫の音を騒音ととらえる人も多くいるが、俳句ではそんな風に詠む人は少ない。
素直な作者の実感が出ていてよい。
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≪当季句≫(秋)
鳥瞰す富士の裾野の大花野 博石
富士山と花野を一つにして眼下に捉えたところがいい。スケールの大きな句。
秋の虹女王陛下大往生 博石
実際にエリザベス女王が亡くなられた時に虹が懸かっていたが弔句の季語としても適切。
黒田杏子先生から弔句は亡くなった人へ季語贈るという気持ちで作ると教わった。
長き夜や本を片手に夢うつつ まさ
読書の秋だが、年寄りのあるあるである。
ベランダに二百十日の雨の音 龍彦
何気ない日常の一コマも、二百十日と置くだけで嵐の予感を想起させる。
マチュピチュの石の廻廊照らす月 博石
こんな光景に出会いたいものだ。
ひつじ田や切り株跳び跳び友の家 まさ
晩秋の田舎の子供の生き生きした様子が目に浮かぶ。
中八になっているが「跳び跳び」というリフレインなので気にならない。
野に出れば至る所に萩の花 良
普段萩が生えているとは気づかないが、花どきになると急に眼に止まる。
そんな日常の驚きが素直に表現されている。
川風や微かに聞こゆ蝉時雨 南行
n 遠く蝉しぐれを聞きながら河辺に休んでいる様子が目に浮かぶ。
来し方や道のり遥か秋彼岸 徹
ふと自分の人生を振り返るとずいぶん遠くまで来たような気がすることがある。
秋彼岸という季語で自分の人生と親或いは遠い祖先と重ねているような感慨に共感する。
<参考>
秋色のキーウの街に空鞦韆 真砂
ウクライナの現状を憂いて詠まれたのだと思うが、映像的にしっかりとしており、
訴えるものがある。ただ空鞦韆は馴染みのない造語なので避けるべき。
(添削例)秋色のキーウ無人のぶらんこが
秋麗や水張り盆に月映し まさ
水に映った月を詠んで、風情があるのだが、秋麗と月が季重なりなっているので、
強い季語の月を残し、添削してみた。
(添削例) 月上る水張る盆に影落とし
手に取りし秋刀魚の細さもの悲し 小百合
今年の秋刀魚は本当に細くて物悲しくなってしまう感じだが、俳句はすべて言い切らず
読み手にも鑑賞の余地を残す方がいい。従って「もの悲し」は言い過ぎ。
(添削例) 手に取りし今年の秋刀魚細かりき
第23回「蘇鉄の会」互選結果 ( )内数字は得票数
兼題「虫」一切
目を閉じて名句浮かべむ虫の闇 (2) 博石
足とめて虫のひと鳴き次を待つ (2) 小百合
虫の音の止みて庭より夫帰る (2) 孝枝
清涼の目覚めの耳に草雲雀 (2) 真砂
月明かり蔭にひっそり虫の声 南行
虫の音や暗闇深く声高し まさ
虫時雨夜更けの目覚め酔いは醒め 徹
虫の音の黙(もだ)歩み寄る余寒かな 龍彦
当季句
秋色のキーウの街の空鞦韆 (4) 真砂
鳥瞰す富士の裾野の大花野 (3) 博石
長き夜や本を片手に夢うつつ (3) まさ
向日葵や見果てぬ夢に地は祈り (2) 徹
手に取りし秋刀魚の細さもの悲し (2) 小百合
秋晴れやピアノ発表会日曜日 (1) 良
マチュピチュの石の廻廊照らす月 (1) 博石
暫し待て芝目の上に赤とんぼ (1) 南行
ひつじ田や切り株跳び跳び友の家 (1) まさ
ふくらみて街の夜景と競う月 (1) 小百合
秋風の通ふ参道登りゆき (1) 孝枝
木の実降る児等の瞳はワンダーランド (1) 龍彦
枝豆を茹で砥部焼の皿に盛り (1) 孝枝
来し方や道のり遥か秋彼岸 (1) 徹
秋灯後ろ姿は父に似て (1) 孝枝
ラッパの音夕餉の友や冷奴 徹
酔芙蓉夜の灯火(ともしび)風の盆 龍彦
とりどりの鶏頭盛る鉢の中 小百合
自転車で衣靡かせ夏少女 南行
散歩道台風一過銀杏や 良
秋の虹女王陛下の大往生 博石
縁切りの橋姫神社におみなえし 真砂
躊躇ひて咲き遅れけり藤袴 真砂
第24回「蘇鉄の会」ご案内
日時:2023年1月21日(土)
御題:兼題「七草または七草粥」1句
当季(冬)雑詠3句 計4句
選評講師:城下洋二先生
開催場所:都合により、会合による開催は取り止めとなり、
WEB上での開催となりました。
※ ご質問お問い合わせは下記メールアドレスにお願いします。
投稿締切:2023年1月15日(日)
投稿方法:兼題1句と当季雑詠3句の計4句
※あらかじめメールにて上記締切までに俳句の投稿をお願いします。
下記メールアドレス迄お送り下さい。
sato-nagashima@coast.ocn.ne.jp
ワード文書でファイル添付又はメールべた打ちでもOK。
「蘇鉄の会」参加を随時受付けています。
上記メールアドレスにお申込み下さい。
年会費:5,000円(振込先は別途ご案内)
~小石川後楽園~
江戸時代初期、寛永6年(1629年)に水戸徳川家の祖である頼房が、江戸の中屋敷(後に上屋敷となる。)の庭として造ったもので、二代藩主の光圀の代に 完成した庭園です。光圀は作庭に際し、明の儒学者である朱舜水の意見をとり入れ、中国の教え「(士はまさに)天下の憂いに先だって憂い、天下の楽しみに後れて楽しむ」から「後楽園」と名づけられました。
庭園は池を中心にした「回遊式築山泉水庭園」になっており、随所に中国の名所の名前をつけた景観を配し、中国趣味豊かなものになっています。また、当園の特徴として各地の景勝を模した湖・山・川・田園などの景観が巧みに表現されています。
(中略)
小石川後楽園は、江戸時代初期の寛永6年(1629年)に水戸徳川家初代藩主・徳川頼房(よりふさ)が江戸の中屋敷(明暦の大火後に上屋敷となる)に築造し、2代藩主・光圀の修治により完成した庭園です。江戸期において最も早く完成した大名庭園で、日本各地の大名庭園に影響を与えたといわれています。
小石川台地の南端に位置する起伏ある地形を利用し造られた園内は、池泉回遊式となっており、「大泉水」の「海」の景観を中心に、「山」「川」「田園(村里)」の変化に富む風景が歩を進めるごとに展開していきます。
調和が美しく、四季折々に異なる表情を見せてくれる小石川後楽園は、今なお優れた景観を維持しており、特別史跡及び特別名勝として国の文化財に指定されています。
開園年月日:昭和13年4月3日
開園面積:70,847.17平方メートル(平成27年7月1日現在)
(東京都公園協会「公園へ行こう」webサイト『この公園について』より転載)
(以下、画像撮影:長島)
地下鉄丸の内線 後楽園駅を出て…
後楽園の塀沿いに…
左に後楽園、右に少年野球グラウンド
小石川後楽園 西門入り口
令和4年10月8日「蘇鉄の会」参加者
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