(2023/10/13) 担当:長尾 小百合(事務局・会計担当 30期)
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俳句同好会 第27回「蘇鉄の会」報告
令和五年十月七日(土)
清澄白河駅を起点に、芭蕉の史跡めぐりをしながら吟行を行いました。10月に入ったにもかかわらず、当日は汗ばむような陽気で、急遽「秋麗(あきうらら)」の兼題の枠を外して自由に句を詠むことに。1時間ほどのちに森下文化センターで落ちあい、句会を開きました。
今回の投句参加者10名、当日の句会参加者は7名(含む講師)、投稿句は全40句でした。
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吟行(当季雑詠):一句
季題:三句
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■城下洋二先生投句
列車待つ支線のホーム赤とんぼ
新豆腐古民家の梁黒々と
アメ横の呼び声太き残暑かな
城下洋二
令和五年十月
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【選句と選評】 講師 城下洋二先生
≪当季句≫(秋)
<特選>
初狩か小さき蟷螂忍び来る 真智子
小さな蟷螂が寄ってくるのを、初めての狩りと見立てたところが面白い。
大仏にそぼ降る雨や秋彼岸 博石
秋雨に濡れた大仏を見るとひとしお秋の深まりを感じます。
秋雨や槇の葉先に光る露 南行
槇の葉の細い先のしずくに目を向けたところがいいです。
それで秋雨が荒々しいものでなく小糠雨のような 静かな雨と分かります。
<並選>
桐の花空いつぱいの花火かな 博石
情景は目に浮かぶのですが、桐の花は地味な色で晴れの日も曇りの日も
空に溶けてしまいそうな色なので、
花火のたとえがいいかどうか私には疑問があります。
荒れた田に薄はびこる双葉町 小百合
福島原発事故の後の情景を呼んだのはいいと思います。
ただ薄がはびこった田んぼは荒れた田なので、「荒れた」は不要です。
(参考)田いちめん薄のおおふ双葉町
引き潮に乗りて宮島夏帽子 徹
情景が目に浮かびますが、引き潮に乗るというのは遠ざかるということでしょうか。
秋蝶の影をリードにペタル漕ぐ 真智子
中七の「影をリードに」が分かりにくいので、
素直に「影を追ひつつ」としてはいかがですか。
(参考)秋蝶の影を追ひつつペダル漕ぐ
遊歩道あんな所に曼珠沙華 良
曼珠沙華は突然花茎が伸びて葉より先に花が咲くので、
あんな所にと言った驚きがあります。素直に読んでいるので好感が持てます。
朝六時銀杏ひろい散歩道 良
この句の主役は「散歩道」ではなく「散歩」なので、それを明確にしましょう。
銀杏ひろいをしながらののんびりした散歩なので、
下五を字余りにしてその感じを出すのはいかがでしょう。
(参考)朝六時銀杏ひろひひろひ散歩
ピンク指す秩父の山は蕎麦の花 真砂
蕎麦の花は白が一般的ですが、赤みがかった花もあります。
まだ青々とした秩父の山の一部に蕎麦の花のピンクが
差し色のように見えるという光景は面白いです。
ただ「ピンク指す」はわかりにくいので添削してみました。
(参考)蕎麦の花秩父の山に紅をさし
秋の夜や静かに響く虫の声 まさ
秋と虫が季重なりです。「秋の夜」を参考のようにすると
虫に焦点が当たり、季重なりも避けられます。
(参考)闇深し静かに響く虫の声
喉笑う初値のさんま鮨一貫 南行
さんまの初物のお鮨、いかにもおいしそうです。
ただ「初値のさんま」ではなく初競りのさんまではないでしょうか。
参考のようにするとリズムもよくなります。
(参考)喉笑ふ初競りさんま鮨一貫
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第27回「蘇鉄の会」互選結果 ( )内数字は得票数
吟行による当季雑詠
秋麗ポトンと一つ種の落つ 真智子
秋麗家族総出で栗拾い 良
秋麗や空青々と風は澄む 博石
川辺りの風心地よき秋日向 小百合 (3)
下町の史跡めぐりや秋麗 徹 (1)
秋麗一雨ごとに風涼し まさ
秋麗アゲハ巣立ちて部屋広し 龍彦 (1)
秋涼し想いは巡る芭蕉庵 南行
紅白の萩そよぎたる芭蕉庵 真砂
秋風や川上る船下る船 城下先生(2)
当季句
蟷螂が足先に着地風かすか 真智子 (1)
朝六時銀杏ひろい散歩道 良
桐の花空いっぱいの花火かな 博石 (1)
荒れた田に薄はびこる双葉町 小百合 (2)
引き潮に乗りて宮島夏帽子 徹
秋風に吹かれてそよぐ名残花 まさ
療養跡の池のほとりに立ち尽くす 龍彦
薄明り浮かれ夜道の虫の闇 南行
ピンク指す秩父の山は蕎麦の花 真砂 (2)
秋蝶の影をリードにペダル漕ぐ 真智子
遊歩道あんな所に曼珠沙華 良
曼珠沙華馬頭観音寄添ひて 博石 (1)
葉に影を落とす蜻蛉の羽模様 小百合 (3)
甲子園世紀越へたり夏飾る 徹 (1)
秋の夜や静かに響く虫の声 まさ
鹿の瞳(め)に映る我らは異邦人 龍彦
喉笑う初値のさんま鮨一貫 南行 (4)
古希超えて伴に花咲く弁慶草 真砂
初狩か小さき蟷螂忍び来る 真智子 (3)
新米や故郷の味懐かしき 良
大仏にそぼ降る雨や秋彼岸 博石 (1)
ビルとビル隙間に野菊の花揺れて 小百合 (1)
夏日射るストの静けさ時遷る 徹
空澄みて色も香りも衣替え まさ (1)
昔むかし肱川颪(おろし)がありしとか 龍彦
秋雨や槇の葉先に光る露 南行 (2)
彼岸花見つけた子らの高き声 真砂 (1)
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第28回「蘇鉄の会」ご案内
開催日時:2024年1月13日(土)11:30~16:30
選評講師:城下洋二先生
御題:兼題「外套(コート、オーバーも可)」1句
当季(冬)雑詠3句 計4句
投句締切:2024年1月5日(金)
投句方法:あらかじめメールにて上記締切までに投句をお願いします。
下記メールアドレスまでお送りください。
nagao@work21.co.jp
ワード文書でファイル添付又はメールべた打ちでもOK。
開催場所:懐石ふじ木
〒104-0045 東京都中央区築地7-4-4 サンクレスト築地1F
https://www.fujiki-kaiseki.net/
集合場所:フェリック社
東京都中央区築地3-12-3 WELL 2ビル2階
2024年1月13日(土)11:50集合
当日会費:5,000円(昼食代・会場費含む)
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「蘇鉄の会」参加を随時受付けています。
上記メールアドレスにお申込み下さい。
年会費:5,000円(振込先は別途ご案内)
(2023/07/13) 担当:長尾 小百合(事務局・会計担当 30期)
担当:長尾小百合(事務局:30期)
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俳句同好会 第26回「蘇鉄の会」報告
令和五年七月八日(土)
江戸時代に発祥をもつ花園「向島百花園(墨田区)」内の御成座敷にて、第26回「蘇鉄の会」を開催いたしました。句会を終えたあとは園内を散歩。オミナエシやキキョウなど、早くも秋の兆しあり。点在する句碑にも足を止め、風情を楽しむひと時を過ごしました。
今回の投句参加者10名(含む講師)、投稿句は全40句でした。
ご挨拶:長島公子さんから、事務局を引き継ぐことになりました長尾小百合と申します。今後はこちらのブログへの投稿も担当させていただきます。どうぞ、よろしくお願いいたします。長島さんには、長い間事務局を務めていただき、大変なご尽力とご貢献をいただきましたことに深く感謝申し上げます。
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兼題:「噴水」一句
季題:三句
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■城下洋二先生投句
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【選句と選評】 講師 城下洋二先生
≪兼 題≫「噴水」
<特選>
噴水の止まりしのちの高さかな 博石
噴水が止まった瞬間、今まで吹き上げていた空の高さに
改めて気づいたという、写真とは違う、俳句でしか
表現できない一瞬を切り取っていて、素晴らしい。
<並選>
噴水や水玉光りてシャンデリア まさ
中七の「水玉光りて」とすると説明的になるので
「光る水玉」とすると中七以下
3,4,5,と句にリズムが出てきて、説明的でなくなる。
(参考)噴水や光る水玉シャンデリア
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≪当季句≫(夏)
<特選>
蛍狩りつなぐ老母の手の細く 小百合
蛍狩りの暗がりで久しぶりに母の手を取った時、
いつの間にか年老い、細くなった母の手に驚いたという句だが、
母の老いを手の細さで具体的に表現したところがいい。
中七の「つなぐ」より「取りし」としたほうが
瞬間の情景となるのではないか。
(参考)蛍狩り取りし老母の手の細く
緑陰に沈みて深き息を吸ふ 真智子
感覚的な句だが、緑陰の感じがよく出ている。
紫陽花や論語繙く雨の午後 博石
晴耕雨読でしょうか。
論語という古典と紫陽花の取り合わせがうまい。
<並選>
夏空やテニス大会日曜日 良
所謂三段切れとなって、句のリズムがぎくしゃく
しているので、語順を変えたほうがよい。
(参考)日曜のテニス大会夏の空
梅雨寒や友と熱燗長談義 徹
熱燗と梅雨寒と季跨りになっているが、
梅雨寒の季語の方が主となっているので
この句の場合問題がない。旧友とのしみじみとした
交流が目に浮かぶ。
雨ごとにぐいぐい伸びる葡萄蔓 真砂
梅雨どきの葡萄の生命力を素直に表現している。
雲の間に大山蓮華開かんと 博石
純白の大山蓮華のつぼみが曇天に凛と咲きかけている
情景が目に浮かぶ。青空でなく曇り空としたことで
余計風情が出ている。
我が庭の主と成りに来若き蟇蛙 真智子
若い蟇蛙が庭の主になり来たと言いたいのだろうが、
表現が窮屈。ここは蟇蛙が庭の主になったと
言い切ったほうが表現に無理がない。
(参考)我が庭の主と成りたる若き蟇
梅雨晴れ間ボタンクサギの紅つぼみ 龍彦
情景は良く見えるが、クサギは実も花も秋の季語。
花の名前は季語であることが多いので注意が必要。
緑なす木漏れ日浴びていで湯かな 南行
「浴びて」が少し説明的なので、
「揺れる」として風の感じを出したほうがいいのではないか。
(参考)緑濃き木漏れ日揺るるいで湯かな
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第26回「蘇鉄の会」互選結果 ( )内数字は得票数
兼題「噴水」
噴水に悲鳴飛び出すガードマン 真智子
噴水や地上か地下か待ち合わせ 良
噴水の止まりしのちの高き空 博石 (3)
噴水のダンスにしばし時忘れ 小百合 (1)
噴水や正にショウなりラスベガス 徹 (1)
噴水や水玉光りてシャンデリア まさ
噴水や繰り出す水技昼も夜も 龍彦
舞い踊る噴水しぶき堀の中 南行 (1)
噴き上がる水に燥ぐや子らの声 真砂 (3)
当季句
∞(無限大)に三回くぐりし茅の輪の懐かしき 真智子(1)
夏空やテニス大会日曜日 良
鐘響く亀が昼寝の菖蒲園 博石 (3)
蛍狩りつなぐ老母の手の細く 小百合 (3)
梅雨寒や友と熱燗長談義 徹 (2)
梅雨さなか傘の花咲くゼブラゾ~ン まさ (1)
青梅の三つ四つ落ちて猫止まる 龍彦 (2)
雨上がり蒼天仰ぐ木槿かな 南行 (1)
雨ごとにぐいぐい伸びる葡萄蔓 真砂 (1)
緑陰に沈みて深き息を吸う 真智子 (2)
日が落ちて夜空に上がる花火かな 良
雲の間に大山蓮華開かんと 博石 (1)
久方の帰省の庭に瓜簾 小百合 (2)
種と人絆を結ぶ夏野菜 徹
街燈の灯りに滲む虹の色 まさ
柿若葉煎茶のかほり肩ゆるむ 龍彦 (1)
烏鳴く姫紫陽花が咲いた朝 南行
賑わいの土曜夜市や大街道 真砂 (1)
我が庭の主と成りに来若き蝦蟇 真智子
夏祭り夜店賑わい老夫婦 良 (1)
紫陽花や論語繙く雨の午後 博石 (2)
遺跡にて草のいきれに過去偲ぶ 小百合
避暑を兼ねゴルフ三昧かの時代 徹
黒南風や湧きてザワザワ吹きにけり まさ
梅雨晴れ間ボタンクサギの紅つぼみ 龍彦
緑なす木漏れ日浴びていで湯かな 南行 (2)
田植え後の水満ち満ちて苗そよぐ 真砂 (2)
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第27回「蘇鉄の会」ご案内
開催日時:2023年10月7日(土)11:30~16:30
選評講師:城下洋二先生
御題:兼題「秋麗(あきうらら)」1句(吟行)
当季(秋)雑詠3句 計4句
投句締切:2023年9月30日(土)
投句方法:兼題は吟行となります。
当季雑詠3句につきましては
あらかじめメールにて上記締切までに投稿をお願いします。
下記メールアドレスまでお送りください。
nagao@work21.co.jp
ワード文書でファイル添付又はメールべた打ちでもOK。
開催場所:隅田川散歩(吟行)→芭蕉記念館見学
→森下文化センター(句会)
集合場所:都営大江戸線・半蔵門線「清澄白河駅」改札付近
2023年10月7日(土)11:30集合
当日会費:3,000円(昼食代・会場費含む)
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「蘇鉄の会」参加を随時受付けています。
上記メールアドレスにお申込み下さい。
年会費:5,000円(振込先は別途ご案内)
(2023/04/09) 担当:長島 公子 (事務局、19期)
俳句同好会 第25回「蘇鉄の会」報告
令和五年四月八日(土)、早くも新緑瑞々しい神代植物公園※(調布市)にて、当会初めての「吟行」を行いました。
今回の投句参加者11名(含む講師)、投稿句は全43句でした。
今回、北高同窓生(18期)1名が体験参加され、入会して下さいました。
兼題:「囀り」一句
季題:三句
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曇天を割って囀り降って来し
木の芽張る窓辺に熊のぬひぐるみ
山鳩の歩めば大地芽吹きゆく
木瓜は満開うかうかとしてをれぬ
城下洋二
令和五年四月
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【選句と選評】 講師 城下洋二
≪兼 題≫
吟行の兼題「囀り」
<特選>
囀りや諍いもあり恋唄も 龍彦
<並選>
囀りや時報の鐘に大合唱 小百合
さへずりにほゝえみ居たる悟堂かな 真砂
(悟堂…園内の林の一角に日本野鳥の会の創始者・中西悟堂の銅像がある。)
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≪当季句≫(春)
<特選>
一点に光あつめて福寿草 龍彦
(講評)福寿草に光が当たり黄金色に輝く様子が見事にとらえられています。
ただ福寿草は早春の花ですが、季語としては新年の季語となります。
卒業歌練習の声校舎より 孝枝
(講評)卒業の光景ではなく、その準備の段階を句にしたところが新鮮です。
いかなごの煮られてへのへのもへじかな 博石
(講評)くぎ煮の様子をひょうきんに表現して、面白い。
いつの日も心安らぐ桜かな 良
(講評)桜に対して人それぞれの思いがありますが、作者はいつも安らぎを
感じている、それを素直に表現されて素晴らしい句になっています。
蕗味噌を味わう齢酒美味し 龍彦
(講評)蕗味噌など若い時はあまり美味しいと思はなかったのですが、
年取るとともにその味わいが分かってきます。酒の味もまた。
<並選>
花疲れ吉野の山の七曲り 博石
(講評)花疲れは花見で歩き疲れた様子を表しますが、花疲れと七曲りとを
取り合わせますと、所謂付き過ぎな感じになります。ここでは季語
を「花霞む」「飛花落花」などとしてはいかがでしょうか。
(添削例)花霞む吉野の山の七曲り
花盛り小枝くわえた烏かな 南行
(講評)花盛りを巣作りにいそしむ鴉が小枝くわえて飛んでゆく光景は自然
の営みを感じる景の一つです。ただ口語と文語が入り混じっている
ので、整理しましょう。
(添削例)花盛り小枝くはへし烏ゆく
満作に風吹きぬけり散歩道 徹
(講評)満作の花は本当に春を感じさせますが、また同時に早春の冷たい風
にも吹かれます。
柔らかな雨降る春や花誘う まさ
(講評)「春」と「花」は季重なりなので語順を変えて避けましょう。
(添削例)花誘ふやわらかな雨降って来し
(参考)
雨上がり久しき顔の花見かな 小百合
(講評)作者の読みたいことはコロナ禍で外出自粛していた人たちが、花見
で久々に顔を合わせたことですね。俳句は十七文字なので言いたい
ことに焦点を絞って詠むことが大切です。そうしないと焦点がぼや
けたり、説明的になったりします。
(添削例)久々に会う人ばかり桜狩り
道灌の越生晴れ野に山吹草 真砂
(講評)道灌と越生、道灌と山吹の故事を織り込んでいますが、ちょっと知
識過剰気味です。また「晴れ野」というのは造語なので避けたい。
越生と道灌が関係あるというのはそんなに有名ではなく、また山吹
の故事はいたるところに比定地がり、例えば新宿区の山吹町など、
自分のためだけに作句ならいいのですが、発表となると故事がそれ
なりの認知度がないと伝わりませんので気を付けてください。
(添削例)晴れ渡る越生の野には山吹草
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第25回「蘇鉄の会」互選結果 ( )内数字は得票数・講師選含む
兼題「囀り」
囀りや諍いもあり恋唄も (3) 龍彦
囀りて時報の鐘に大合唱 (2) 小百合
囀りや友と語らふ森の中 (1) 博石
風に乗り囀る主やいずこかな (1) まさ
亡き友と調べたあの日の囀りに (1) 真智子
曇天を割って囀り降って来し (1) 洋二
囀りに憂ひは晴れし森の精 (1) 徹
さへずりに微笑み居たる悟堂かな (1) 真砂
囀りや煩き程に冴え渡る 良
囀りて騒ぐ梢枝やそよぐ風 南行
当季句
花疲れ吉野の山の七曲り (4) 博石
一点に光あつめて福寿草 (4) 龍彦
いかなごの煮られてへのへのもへじかな (3) 博石
しきりなる落花にむせぶ地蔵様 (2) 博石
蕗味噌を味わう齢酒美味し (2) 龍彦
花盛り小枝くわへた烏かな (2) 南行
満作に風吹き抜けり散歩道 (2) 徹
やわらかな雨降る春や花誘ふ (2) まさ
道灌の越生(おごせ)晴れ野に山吹草 (2) 真砂
いつの日も心安らぐ桜かな (1) 良
卒業歌練習の声校舎より (1) 孝枝
花散りて緑はつらつ桃の枝 (1) 小百合
百(もも)年(とせ)とこども図書館花の舞ふ (1) 真砂
春の雨旅立つ友の寂しさよ (1) 良
雨上がり久しき顔の花見かな (1) 小百合
藏澤の竹の絵古し春日差し (1) 孝枝
目に沁みる若葉の匂ひ湯のけむり (1) 南行
時満ちて旅にしあれば菜種梅雨 (1) 徹
巣立ちあり足踏みありの湯島かな (1) 真砂
限り無く樹木の芽吹く神の森 孝枝
早春や願い叶ひて深大寺 良
雨上がり笑顔が並ぶ花の雲 南行
三年に及ぶマスクや杉の花 徹
山の春緑のトンネルくぐる君 まさ
「嘘っそう」と早春の朝顔濃紫 龍彦
春陽気ブーツ仕舞いて日傘出す 小百合
春灯や霞む街並み絵のごとし まさ
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第26回「蘇鉄の会」ご案内
開催日時:2023年7月8日(土)13:00~16:30
選評講師:城下洋二先生
御題:兼題「噴水」1句
当季(夏)雑詠3句 計4句
投句締切:2023年7月1日(土)
投句方法:兼題1句と当季雑詠3句の計4句
※あらかじめメールにて上記締切までに俳句の投稿をお願いします。
下記メールアドレス迄お送り下さい。
sato-nagashima@coast.ocn.ne.jp
ワード文書でファイル添付又はメールべた打ちでもOK。
開催場所:向島百花園
集合場所:東武伊勢崎線「東向島駅」7月8日(土)12:30集合
( 向島百花園へ直接行く場合は事前にお知らせください。)
当日会費: 3,000円(昼食代含む)
「蘇鉄の会」参加を随時受付けています。
上記メールアドレスにお申込み下さい。
年会費:5,000円(振込先は別途ご案内)
(2023/01/24) 担当:長島 公子 (事務局、19期)
俳句同好会 第24回「蘇鉄の会」報告
大寒を控えた令和五年一月二十一日(土)、築地にて予定しておりました第24回「蘇鉄の会」は、急遽、複数の会員の都合によりWEB上での開催となりました。
今回の投句参加者9名(含む講師)、投稿句全36句でした。
兼題:「七草」または「七草粥」一句
季題:三句
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子の作る七草粥をたなごころ
目つむれば星降る夜の柚子湯かな
初晴や八幡様の幟旗
まさおなる空より御慶大鴉
令和五年一月
城下洋二
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【選句と選評】 講師 城下洋二
≪兼 題≫
「七草」または「七草粥」一句
<特選>(選者:城下洋二)
七草や畦道あゆむ老夫婦 (作者) 良
(講評)七草粥の若菜を摘みに畦をゆく老夫婦。
情景が良く見え、農村の素朴な慣習が偲ばれる。
<並選>(選者:城下洋二)
七草や数へる指に老いを知る (作者) 龍彦
(講評)昔なら躊躇なく言えたのに七草の名前を指折り数えて いる自分に気付いて、老いを改めて感じたという句意だが、老年世代には「あるある」である。
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≪当季句≫(冬)
<特選>(選者:城下洋二)
初場所や酒酌み交はす友がをり (作者) 南行
(講評)桟敷席でもテレビの前でもよいが、相撲を見ながら友と杯を重ねる幸福をしみじみ感じている。年を取ると一層そう思う。
松代の地下壕出れば冬紅葉 (作者) 龍彦
(講評)松代大本営跡の地下壕、敗戦、強制労働などの暗い記憶から、眼前の平和で鮮やかな冬紅葉、その対比が素晴らしい。
大寒や子犬の散歩朝六時 (作者) 良
(講評)大寒のしかも一日で最も寒い朝の六時の散歩、可愛い子犬のためなら仕方ない。愛情あふれる一句。
<並選>(選者:城下洋二)
年の瀬や日に日に重し朝刊の (作者) 徹
(講評)年の瀬になると新聞がだんだん分厚くなるのを句にしたのであろう。
表現としては倒置法にせず、参考のように素直に表現した方が
無理がない。
(参考)朝刊の日に日に重し年詰まる
友情のなごりのごとき賀状来る (作者) 孝枝
(講評)賀状のみの交流は確かに友情のなごりみたいである。
私は息災確認と思っているが。
母想ふ手向けたきや冬リンゴ (作者) まさ
(講評)句意は明確なのだが、「手向ける」と言えば母を思っていることに
なるのでそこを整理して次のようにした方がすっきりするのではないか。
(参考)手向けけり母の好物冬リンゴ
冬木立空飛ぶ凧を絡め採る (作者) 博石
(講評)凧は春、凧あげは新年と凧はややこしい季語であるが、この場合
冬木立を主たる季語としてとらえたい。
冬木立を擬人化しているところも面白い。
親猫もそつと寄り添ふ冬の朝 (作者) 真砂
(講評)親猫もとあるので作者と子猫そして親猫も寄り添っているのであろう。
寒い朝のほっこりする情景を切り取っている。
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第24回「蘇鉄の会」互選結果 ( )内数字は得票数
兼題「七草」または「七草粥」
七草や薺をたたく囃子かな (2) まさ
七草粥七の調べは母譲り (2) 徹
七草や畦道あゆむ老夫婦 (1) 良
七草の名前すらすら口ずさむ (1) 博石
七草や数える指に老いを知る (1) 龍彦
八日にも七草浮かべ澄ましかな (1) 真砂
七草を子は指折りて覚えけり 孝枝
風強し日向で啜る七草粥 南行
当季句
残されし時を惜しむや烏瓜 (3) 博石
初場所や酒酌み交わす友がをり (3) 南行
友情のなごりのごとき賀状来る (3) 孝枝
朝まだき作務衣揃ひてすす払ひ (2) 徹
伊予柑の香り懐かし届きをり (2) 孝枝
正月や子供二人に孫五人 (1) 良
冬木立空飛ぶ凧を絡め採る (1) 博石
年の瀬や日に日に重し朝刊の (1) 徹
紅白の南天活けて福を呼ぶ (1) まさ
セーターの黙をとうして反抗期 (1) 孝枝
元旦の新聞重し初仕事 (1) 博石
親猫もそっと寄り添ふ冬の朝 (1) 真砂
アメ横に掛け声飛びて年越しぞ (1) 徹
大寒や子犬の散歩朝六時 (1) 良
冬空の月と惑星宇宙ショー (1) 龍彦
鴛鴦の番憩ふや皇居濠 (1) 真砂
松代の地下壕出れば冬紅葉 龍彦
駐車場掃いて掃いても落葉かな 良
母想ふ手向けたきや冬リンゴ まさ
小鴨達浮かぶ日向に風そよぐ 南行
祝成人膝前の指乙女さぶ 龍彦
冬鳥の声につられて鼻歌す まさ
ちゃんちゃんこ腹から覗く嬰児かな 南行
散紅葉花舞ふごとき蒼き空 真砂
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第25回「蘇鉄の会」ご案内
日時:2023年4月8日(土)11:00~16:00
選評講師:城下洋二先生
御題:兼題「囀り(さえずり)」1句(※下記ご参照)
当季(春)雑詠3句 計4句
投句締切:2023年4月1日(土)
投句方法:当季雑詠3句
※あらかじめメールにて上記締切までに俳句の投稿をお願いします。
下記メールアドレス迄お送り下さい。
sato-nagashima@coast.ocn.ne.jp
ワード文書でファイル添付又はメールべた打ちでもOK。
※ 吟行のご案内
1.兼題:「囀り」
2.場所:調布市深大寺
3.集合場所:JR三鷹駅 中央改札口正面 JRみどりの窓口前
4.集合時間:午前10時50分
5.参加費用:昼食代:約2,000円 年会費:5,000円
「蘇鉄の会」参加を随時受付けています。
上記メールアドレスにお申込み下さい。
年会費:5,000円(振込先は別途ご案内)
(2022/10/09) 担当:長島 公子 (事務局、19期)
俳句同好会 第23回「蘇鉄の会」報告
この9月以降、連続して日本列島を襲う台風の合間の奇跡的な快晴の日となった令和4年10月8日(土)、「蘇鉄の会」は、東京都文京区後楽にある小石川後楽園の涵徳亭にて開催いたしました。
今回の投句参加者10名(含む講師)。句会参加者8名。投稿句全40句。
選者及び講師 城下洋二氏の略歴:愛媛県出身。黒田杏子主宰「藍生」俳句会会員。俳人協会会員。藍生新人賞、藍生賞受賞。句集「銀杏坂」
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虫の音の寄せくる坐り机かな
明月草雨の小道をふさぎをり
糸瓜忌を過ぎて小さき糸瓜かな
溢蚊の血を吸ふでなく止まりけり
城下 洋二
令和四年十月
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【選句と選評】 城下洋二 講師
≪兼 題≫
「虫」一切
<特選>
虫の音の止みて庭より夫帰る 孝枝
夜の散歩か朝帰りか、夫婦の間のドラマを感じさせる。
<並選>
夜更けて耳鳴りのよう虫の声 良
虫の音を騒音ととらえる人も多くいるが、俳句ではそんな風に詠む人は少ない。
素直な作者の実感が出ていてよい。
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≪当季句≫(秋)
<特選>
鳥瞰す富士の裾野の大花野 博石
富士山と花野を一つにして眼下に捉えたところがいい。スケールの大きな句。
秋の虹女王陛下大往生 博石
実際にエリザベス女王が亡くなられた時に虹が懸かっていたが弔句の季語としても適切。
黒田杏子先生から弔句は亡くなった人へ季語贈るという気持ちで作ると教わった。
長き夜や本を片手に夢うつつ まさ
読書の秋だが、年寄りのあるあるである。
ベランダに二百十日の雨の音 龍彦
何気ない日常の一コマも、二百十日と置くだけで嵐の予感を想起させる。
<並選>
マチュピチュの石の廻廊照らす月 博石
こんな光景に出会いたいものだ。
ひつじ田や切り株跳び跳び友の家 まさ
晩秋の田舎の子供の生き生きした様子が目に浮かぶ。
中八になっているが「跳び跳び」というリフレインなので気にならない。
野に出れば至る所に萩の花 良
普段萩が生えているとは気づかないが、花どきになると急に眼に止まる。
そんな日常の驚きが素直に表現されている。
川風や微かに聞こゆ蝉時雨 南行
n 遠く蝉しぐれを聞きながら河辺に休んでいる様子が目に浮かぶ。
来し方や道のり遥か秋彼岸 徹
ふと自分の人生を振り返るとずいぶん遠くまで来たような気がすることがある。
秋彼岸という季語で自分の人生と親或いは遠い祖先と重ねているような感慨に共感する。
<参考>
秋色のキーウの街に空鞦韆 真砂
ウクライナの現状を憂いて詠まれたのだと思うが、映像的にしっかりとしており、
訴えるものがある。ただ空鞦韆は馴染みのない造語なので避けるべき。
(添削例)秋色のキーウ無人のぶらんこが
秋麗や水張り盆に月映し まさ
水に映った月を詠んで、風情があるのだが、秋麗と月が季重なりなっているので、
強い季語の月を残し、添削してみた。
(添削例) 月上る水張る盆に影落とし
手に取りし秋刀魚の細さもの悲し 小百合
今年の秋刀魚は本当に細くて物悲しくなってしまう感じだが、俳句はすべて言い切らず
読み手にも鑑賞の余地を残す方がいい。従って「もの悲し」は言い過ぎ。
(添削例) 手に取りし今年の秋刀魚細かりき
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第23回「蘇鉄の会」互選結果 ( )内数字は得票数
兼題「虫」一切
目を閉じて名句浮かべむ虫の闇 (2) 博石
足とめて虫のひと鳴き次を待つ (2) 小百合
虫の音の止みて庭より夫帰る (2) 孝枝
清涼の目覚めの耳に草雲雀 (2) 真砂
夜更けて耳鳴りのよう虫の声 良
月明かり蔭にひっそり虫の声 南行
虫の音や暗闇深く声高し まさ
虫時雨夜更けの目覚め酔いは醒め 徹
虫の音の黙(もだ)歩み寄る余寒かな 龍彦
当季句
秋色のキーウの街の空鞦韆 (4) 真砂
鳥瞰す富士の裾野の大花野 (3) 博石
長き夜や本を片手に夢うつつ (3) まさ
向日葵や見果てぬ夢に地は祈り (2) 徹
手に取りし秋刀魚の細さもの悲し (2) 小百合
秋晴れやピアノ発表会日曜日 (1) 良
マチュピチュの石の廻廊照らす月 (1) 博石
暫し待て芝目の上に赤とんぼ (1) 南行
ひつじ田や切り株跳び跳び友の家 (1) まさ
ふくらみて街の夜景と競う月 (1) 小百合
秋風の通ふ参道登りゆき (1) 孝枝
木の実降る児等の瞳はワンダーランド (1) 龍彦
枝豆を茹で砥部焼の皿に盛り (1) 孝枝
来し方や道のり遥か秋彼岸 (1) 徹
秋灯後ろ姿は父に似て (1) 孝枝
ベランダに二百十日の雨の音 龍彦
ラッパの音夕餉の友や冷奴 徹
酔芙蓉夜の灯火(ともしび)風の盆 龍彦
とりどりの鶏頭盛る鉢の中 小百合
野に出れば至る所に萩の花 良
川風や微かに聞こゆ蝉時雨 南行
秋麗や水張り盆に月映し まさ
自転車で衣靡かせ夏少女 南行
散歩道台風一過銀杏や 良
秋の虹女王陛下の大往生 博石
縁切りの橋姫神社におみなえし 真砂
躊躇ひて咲き遅れけり藤袴 真砂
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第24回「蘇鉄の会」ご案内
日時:2023年1月21日(土)
御題:兼題「七草または七草粥」1句
当季(冬)雑詠3句 計4句
選評講師:城下洋二先生
開催場所:都合により、会合による開催は取り止めとなり、
WEB上での開催となりました。
※ ご質問お問い合わせは下記メールアドレスにお願いします。
投稿締切:2023年1月15日(日)
投稿方法:兼題1句と当季雑詠3句の計4句
※あらかじめメールにて上記締切までに俳句の投稿をお願いします。
下記メールアドレス迄お送り下さい。
sato-nagashima@coast.ocn.ne.jp
ワード文書でファイル添付又はメールべた打ちでもOK。
「蘇鉄の会」参加を随時受付けています。
上記メールアドレスにお申込み下さい。
年会費:5,000円(振込先は別途ご案内)
~小石川後楽園~
江戸時代初期、寛永6年(1629年)に水戸徳川家の祖である頼房が、江戸の中屋敷(後に上屋敷となる。)の庭として造ったもので、二代藩主の光圀の代に 完成した庭園です。光圀は作庭に際し、明の儒学者である朱舜水の意見をとり入れ、中国の教え「(士はまさに)天下の憂いに先だって憂い、天下の楽しみに後れて楽しむ」から「後楽園」と名づけられました。
庭園は池を中心にした「回遊式築山泉水庭園」になっており、随所に中国の名所の名前をつけた景観を配し、中国趣味豊かなものになっています。また、当園の特徴として各地の景勝を模した湖・山・川・田園などの景観が巧みに表現されています。
(中略)
小石川後楽園は、江戸時代初期の寛永6年(1629年)に水戸徳川家初代藩主・徳川頼房(よりふさ)が江戸の中屋敷(明暦の大火後に上屋敷となる)に築造し、2代藩主・光圀の修治により完成した庭園です。江戸期において最も早く完成した大名庭園で、日本各地の大名庭園に影響を与えたといわれています。
小石川台地の南端に位置する起伏ある地形を利用し造られた園内は、池泉回遊式となっており、「大泉水」の「海」の景観を中心に、「山」「川」「田園(村里)」の変化に富む風景が歩を進めるごとに展開していきます。
(中略)
調和が美しく、四季折々に異なる表情を見せてくれる小石川後楽園は、今なお優れた景観を維持しており、特別史跡及び特別名勝として国の文化財に指定されています。
開園年月日:昭和13年4月3日
開園面積:70,847.17平方メートル(平成27年7月1日現在)
(東京都公園協会「公園へ行こう」webサイト『この公園について』より転載)
(以下、画像撮影:長島)
地下鉄丸の内線 後楽園駅を出て…
後楽園の塀沿いに…
左に後楽園、右に少年野球グラウンド
小石川後楽園 西門入り口
令和4年10月8日「蘇鉄の会」参加者
(2022/07/09) 担当:長島 公子 (事務局、19期)
俳句同好会 第22回「蘇鉄の会」報告
令和4年7月8日(金)午後1時より、東京都江東区清澄にあります史跡公園「清澄庭園」の池に突き出て建てられた「涼亭」において第22回蘇鉄の会を開催しました。
「(清澄庭園は)泉水、築山、枯山水を主体にした「回遊式林泉庭園」です。この造園手法は、江戸時代の大名庭園に用いられたものですが、明治時代の造園にも受けつがれ、清澄庭園によって近代的な完成をみたといわれています。
この地の一部は江戸の豪商・紀伊國屋文左衛門の屋敷跡と言い伝えられています。享保年間(1716~1736年)には、下総国関宿の藩主・久世大和守の下屋敷となり、その頃にある程度庭園が形づくられたようです。
明治11年、岩崎弥太郎が、荒廃していたこの邸地を買い取り、社員の慰安や貴賓を招待する場所として庭園造成を計画、明治13年に「深川親睦園」として一応の竣工をみました。弥太郎の亡きあとも造園工事は進められ、隅田川の水を引いた大泉水を造り、周囲には全国から取り寄せた名石を配して、明治の庭園を代表する「回遊式林泉庭園」が完成しました。
清澄庭園は、関東大震災で大きな被害を受けましたが、この時図らずも災害時の避難場所としての役割を果たし、多数の人命を救いました。岩崎家では、こうした庭園の持つ防災機能を重視し、翌大正13年破損の少なかった東側半分(現庭園部分)を公園用地として東京市に寄付し、市ではこれを整備して昭和7年7 月に公開しました。
また、昭和52年には、庭園の西側に隣接する敷地を開放公園として追加開園しました。ここには芝生広場、パーゴラなどがあります。また、サクラの木が20本ほど植えられ、春のお花見の場となっています。なお、庭園の方は、昭和54年3月31日に東京都の名勝に指定されています。
都立公園・都指定名勝
住所:東京都江東区清澄三丁目3-9
面積:37,434.32㎡
開園:1932年7月24日」
(東京都公園協会「公園へ行こう」webサイト『この公園について』より)
清澄庭園 涼亭
今回の参加は、講師を含む投稿者10名、全40句でした。
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城下洋二 講師 句
青梅の香や湯に子供入れしこと
慎ましき祈りの館半夏雨
山小屋の屋根の雨音夏炉焚く
室外機みな路地を向く暑さかな
令和四年七月
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【選評と講評】 講師 城下洋二 氏
≪兼 題≫
「青梅」
<特選>
青梅を丁寧にふき梅酒漬く 孝枝
丁寧にの一語でみんなに喜んでもらおうと梅酒をつけている感じが出ている。
青梅の三粒生りしを弄ぶ 博石
ようやく実のつけ始めた梅であろう。この数では梅酒にも梅干し
にもできないが、何となく愛おしくてついつい「弄ぶ」。
実の成り始めた梅に対する作者の思いがうまく表現できている。
<並選>
故郷や弟よりの青梅なり 良
上五を「や」で切る必要がない。むしろ「や」と「なり」の切れ字が重なり、どちらを重要視しているのか不分明なので避けたい
(添削例)故郷の弟よりの青梅なり
葉隠れの青梅一つまた一つ まさ
数詞は必然性がないと語呂合わせとなり、句が陳腐になる。この句の場合、葉に隠れていた実に気が付くと次々と見つかったという驚きの描写なので数詞の表現を工夫してみたい。
(添削例)葉隠れの青梅一つ三つ六つ
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≪当季句≫(夏)
<特選>
シャンソンが白雨の庭に響く午後 南行
外には驟雨、内にはシャンソン。二つの取り合わせで、夏の午後の気怠い感じがよく出ている。
空蝉よ集いて語れ終戦忌 龍彦
蝉ではなく、空蝉としたことで、戦争体験が風化していくことに
作者が危機を感じているのが私には感じられた。
更衣して朝礼の列増えしごと 孝枝
暗い色の制服から白い夏の制服へ一斉に変わった時の鮮やかな印象をよく捉えている。
<並選>
緑さす白き山肌尾瀬ヶ原 南行
緑さすの季語が初夏の尾瀬ヶ原の情景によく合う。
城の背にまんまるかかる夏至の月 真砂
月が懸かるというのは常套的なので省いたほうがいい。
(添削例)城の背にまことまんまる夏至の月
新しき服着てくぐる薔薇の門 孝枝
薔薇の門と新しき服の取り合わせがうまい。
二三日胡瓜採らねば規格外 博石
スーパーで見かける形の揃った野菜を見かけると不自然さを感じる。作者もそんな日本の現状に違和感を覚えているのだろう。
「規格外」の表現がうまい。
夏来たり傘寿の巡り宮参り 徹
傘寿おめでとうございます。ただ「傘寿の巡り」はよく分からないので、感謝の気持ちととって添削してみた。
(添削例)夏来たる傘寿の感謝宮参り
(参考)
日盛りの硝子戸のうち漱石房 真砂
漱石の旧居は「漱石山房」であり、固有名詞を造語に置き換えることはできない。
ただ「硝子戸の中」という作品名を織り込んでおり、
いい素材なので添削してみた。
字余りは上五にもっていくのが原則なので、
(添削例)漱石山房硝子戸の中日の盛り
ベランダで大葉ひろげるタフな紫蘇 小百合
俳句はすべて言うと味が無くなる。読者に想像の余地がないと散文や報告文になってしまう。この句の場合紫蘇と大葉は同じ事を意味するので避け、タフなとまではいわないほうがいい。ベランダも紫蘇も夏の季語なのだが、この句の場合季重りでも仕方ないと思う。
(添削例)ベランダや紫蘇の大きく葉を広げ
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第22回「蘇鉄の会」互選結果 ( )内数字は得票数
兼題「青梅」
葉隠れの青梅一つまた一つ (4) まさ
狭き庭にも鈴なりの青梅かな (3) 真砂
青梅を丁寧にふき梅酒漬く (1) 孝枝
青梅の一雨打ちて鮮やかや (1) 徹
ゴルフ茶屋青梅ふたつ空蒼し 南行
青梅の三粒成りしを弄ぶ 博石
青梅や連なる枝に蒼き風 龍彦
故郷や弟よりの青梅なり 良
庭先に並ぶ青梅唾がわく 小百合
当季句
田植え前水面を叩く燕たち (4) 博石
夏空に明日は巣立ちか四十雀 (3) 良
二三日胡瓜撮らねば規格外 (3) 博石
ここだけは晴れたる雨の花柘榴 (2) 龍彦
シャンソンが白雨の庭に響く午後 (2) 南行
田舎道植田は鏡よ山映る (2) まさ
空蝉よ集いて語れ終戦忌 (1) 龍彦
夏来たり傘寿の巡り宮参り (1) 徹
緑さす白き山肌尾瀬が原 (1) 南行
夏帽子被り少女の乙女さぶ (1) 孝枝
シャボン玉散る花びらとランデブー (1) 博石
紫陽花や変化を楽しむ雨の日々 (1) まさ
水映える田植えは間近旅列車 (1) 徹
ベランダで大場ひろげるタフな紫蘇 (1) 小百合
城の背にまんまるかかる夏至の月 (1) 真砂
落ちてなほ律儀に並ぶ実梅かな (1) 龍彦
新じゃがを茹でて夕餉の馳走かな (1) 真砂
遅ればせ息子の昇進嬉しけり 良
玉の汗ポロリ顎から落ちにけり 小百合
菜の花や地下はともし火果てしなく 徹
更衣して朝礼の列増えしごと 孝枝
つばめ来て並ぶ仲間と歌合戦 まさ
鳴り響く夏至の清水トランペット 南行
茄子焼いて冷えたビールで人心地 小百合
朝市や甘々娘大人気 良
新しき服着てくぐる薔薇の門 孝枝
日盛りの硝子戸のうち漱石房 真砂
古池や蛙飛び込む水の音(石碑)
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第23回「蘇鉄の会」ご案内
日時:2022年10月8日(土)12:30~16:00
御題:兼題「 虫一切 」(秋の虫、蟋蟀・バッタ・鈴虫など)1句
当季(秋)雑詠3句 計4句
選評講師:城下洋二 氏
開催場所:小石川後楽園 (文京区後楽1-6-6)
開催時間:12:30~16:00
参加費用:昼食代含め3,000円程度
投稿締切:2022年9月28日(水)
投稿方法:兼題1句と当季雑詠3句の計4句
※あらかじめメールにて上記締切までに俳句の投稿をお願いします。
下記メールアドレス迄お送り下さい。
sato-nagashima@coast.ocn.ne.jp
ワード文書でファイル添付又はメールべた打ちでもOK。
松山北高校同窓生の「蘇鉄の会」参加を随時受付けています。
上記メールアドレスにお申込み下さい。
年会費:5,000円(振込先は別途ご案内)
尚尚
(2022/04/11) 担当:長島 公子 (事務局、19期)
俳句同好会 第21回「蘇鉄の会」報告
令和4年4月9日(土)午後12時過ぎより、2年ぶりに「蘇鉄の会」を築地にて開催しました。
今回から、北高30回期卒の新しい会員も1人加わり、久々に賑やかな嬉しい集まりとなりました。
築地の美味しい海産物料理のランチを頂いた後は、マスクを付けての句評会でしたが、久しぶりの楽しい会話のひとときを過ごすことができました。
句会を終えた午後2時過ぎころから1時間余り、築地をわが庭とする宮下幹事長の案内で築地界隈のさくら見物巡り、オオシマザクラ、ウコンザクラ、御室桜などを堪能し、隅田川沿いの散策ロードをゆっくり歩き、この2年間のコロナ自粛で弱りかけた足の鍛錬もすることができました。
今回の参加は、講師を含む投稿者10名、全40句でした。
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(城下先生 投句)
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【選評と講評】 城下洋二 講師
≪兼 題≫
「蛙」
<特選>
悪戯っ子机の上に置く蛙 博石
蛙の句として新鮮な情景を切り取っている。
<並選>
療養所湖面に響く牛カエル 龍彦
ウシガエルの鳴き声は独特で、湖面に響くという表現がぴったりだ。
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≪当季句≫
<特選>
遊山箱出してうれしや雛荒らし まさ
雛荒らし、遊山箱というローカルな言葉を使い、雛祭の頃の弾んだ
気持ちが生き生きと表現されている。
春愁や首に冷たき首飾り 孝枝
春愁と首飾りの感触の取り合わせがうまい。
風花や荒ぶる海に伊根の宿 南行
舟屋を改造した宿屋なのだろう。風花の舞う日本海の荒ぶる海が
目に浮かぶ。また伊根は浦島伝説の場所なので浦島太郎が帰って
きた時の寒々とした感情と冬の光景が重なってその地名が生きて
いる。
<並選>
居酒屋に賑はひ還る春の宵 徹
コロナの蔓延防止措置が解除になった現在を過不足なく詠んでいる。
長竿に浮かぶ小舟の寒しじみ 南行
情景が目に浮かぶが、「長竿に浮かぶ」というのは分かりにくいので
長竿で刺しゆく小舟寒しじみ」
としては如何でしょう。
寒鮒の跳ねて波紋の広がりぬ 博石
静かな寒鮒釣りの様子が目に浮かぶ
春雨や枝に真珠の首飾り まさ
春の細かい雨の感じが表現できている。
<添削例>
雨蛙どこに行ったかとんと見ぬ 良
蛙の中で雨蛙と蟇蛙は夏の季語。この句は説明し過ぎなので、
「とんと見ぬ」を削り、雨蛙が見られないことの思いを足した
方がよくなると思う。
(例) 雨蛙どこへ行つたかさびしいぞ
蛙見てこわごわ伸ばす幼い手 小百合
手を伸ばす以上蛙は見えているので「見て」は省くと、
少し散文的ではなくなる。
(例) こはごはと蛙へ伸ばす幼き手
初蛙庭石に乗る夜明けかな 真砂
この並びだと夜明けが主となるので、初蛙を主にした方が句として
すっきりとすると思う
(例) 夜が明けてゆく庭石に初蛙
孫ライン花冷えの日に書店訊く 真砂
「孫ライン」は日本語としてこなれてないので「孫よりのライン」
とはっきり表現すべき。またこの語順だと窮屈な感じがするので、
並び替えてみた。
(例) 書店訊く孫よりのライン桜冷え
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第21回「蘇鉄の会」互選結果 ( )内数字は得票数
兼題「蛙」
蛙見てこわごわ伸ばす幼い手 (5) 小百合
雨蛙どこに行ったかとんと見ぬ (1) 良
悪戯っ子机の上に置く蛙 (1) 博石
療養所湖面に響く牛カエル (1) 龍彦
初蛙庭石に乗る夜明けかな (1) 真砂
遠蛙鳴きて懐かし母の家 孝枝
ケロケロと蛙の里は恋しきり 徹
暖かき庭の隅ゆくヒキガエル まさ
うとうとと鮭の面とにらめっこ 南行
当季句
六地蔵赤き前掛け春隣り (3) 博石
早春や鳥のさえづり木々を縫ひ (3) 徹
崖上の白梅蒼天つらぬけり (3) 龍彦
居酒屋に賑はひ還る春の宵 (3) 徹
春愁や肌に冷たき首飾り (3) 孝枝
三月の雪にびっくり指凍る (2) 小百合
院庭に花咲き乱れ天仰ぐ (1) 南行
春近し接ぎ木芽を出す暖かさ (1) 良
雲母坂登り切りたる春遠し (1) 真砂
春雨や枝に真珠の首飾り (1) まさ
寒鮒の跳ねて波紋の広がりぬ (1) 博石
風花や荒ぶる海に伊根の宿 (1) 南行
蒲公英を上から撮影まるでお日さま (1) 小百合
八丈の紬着けたる鶫(つぐみ)かな (1) 博石
大阪場所新風吹けり千秋楽 (1) 龍彦
春の日にひねもすのたり猫寝たり (1) 真砂
すずかけの実ゆれており春の風 龍彦
木々の芽の競いていたり神の森 孝枝
遊山箱出してうれしや雛荒らし まさ
桃過ぎてあっという間に桜過ぎ 小百合
寒さゆえますます美味なり干し大根 良
春一番少女は髪をなびかせて 孝枝
啓蟄の声は聴けどもまだ寒し まさ
桜咲き別れの季節もの悲し 良
訪れは河岸に小舟は花の園 徹
長竿に浮かぶ小舟や寒しじみ 南行
孫ライン花冷えの日に書店訊く 真砂
…
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第22回「蘇鉄の会」ご案内
日時:2022年7月8日(金)13:00~16:30
御題:兼題「青梅」1句及び当季雑詠3句 計4句
選評講師:城下洋二先生
開催場所:清澄庭園 13:00集合
都営大江戸線・東京メトロ半蔵門線「清澄白河」(E14・Z11)駅下車 徒歩3分
https://www.city.koto.lg.jp/spot/kiyosumi.html
参加費用:昼食代含め4,000円程度
投稿締切:2022年6月28日(火)
投稿方法:兼題1句と当季雑詠3句の計4句
※あらかじめメールにて上記締切までに俳句の投稿を受け付けます。
下記メールアドレス迄お送り下さい。
sato-nagashima@coast.ocn.ne.jp
ワード文書でファイル添付又はメールべた打ちでもOK。
「蘇鉄の会」参加申込:上記メールアドレスにお申込み下さい。
年会費:5,000円(振込先は別途ご案内)
尚尚
(2022/01/09) 担当:長島 公子 (事務局、19期)
俳句同好会 第20回「蘇鉄の会」報告
令和4年1月8日(土)、築地にて久々に集合開催の予定でしたが、直前に新型コロナ・オミクロン株急拡大が顕著となったため急遽予定変更となり、今回もWEB開催となりました。
元旦は美しい抜けるような青空の拡がりを見せた年明けとなりましたので、今年は、この人類に課せられた困難な事態も次第に晴れて明るい年になっていくことでしょう。
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(城下先生 投句)
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【選評と講評】 城下洋二 講師
≪兼 題≫
「雑煮」
<特選>
憂きことも佳きこともあり雑煮食ふ 龍彦
一定の年齢にならないと作れない俳句。もちろん若くても詠めますが、実感が伴わないので気障に聞こえます。
<並選>
お雑煮や瀬戸の香残るいりこ出汁 博石
お雑煮は全国百種以上あるそうですが、いりこ出汁は瀬戸内のものかもしれません。懐かしいと言わずに具体的に「いりこ出汁」と言ったところが素晴らしい。
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≪当季句≫
<特選>
穭田に石投げてみる初氷 博石
穭(ひつじ)田(た)は秋、初氷は冬の季語ですが、この句の場合、明らかに初氷が主と分かるので問題ありません。荒涼とした穭田の水たまりと思しきところに石を投げてみる。案の定乾いた音がする。初氷だ。少年の頃の弾んだ心が蘇る。
急激に体に堪へる冬が来た 良
口語と方言が生きた句。これを文語にして「急激に体に堪ふ冬来たる」とすると臨場感が薄れる気がします。
寒き朝横目で睨む雀かな 南行
私は四十年ぐらい毎朝雀に餌をやっているのですが、雀は警戒心が強く、その眼光は意外と鋭く、時に恐竜の子孫を思わせます。寒い朝ふと雀と目が合った瞬間をよくとらえています。
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<並選>
円空仏供へる柿は一つなり 龍彦
素朴な円空仏には沢山の贅沢な供え物ではなく、そこいらに生っている柿一つが似合うという趣旨なのでしょうが、表現が少し見えを切っているように感じられるので、次のようにされた方が自然な気がします。
(添削) 円空仏に柿ひとつ供へけり
ささ鳴きや小枝を揺らす訪問者 まさ
鶯の姿はなかなか見つけ難いものですが、枝から枝へ細かく動き回るので、見当がつきます。ただ「訪問者」とまで言わなくてもいいのではないでしょうか。
(添削)ささ鳴きや藪の小枝を揺らしをり
友逝けり君亡き年も暮れゆかむ 龍彦
「友逝けり」と「君亡き」とは同じことを言っているので、どちらかを省いた方がいいです。私も友人を失くすことが増えてきましたので、その心情は良く分かります。今年は晴天が多かったので次のようにしたら如何でしょう。
(添削) よく晴れて君亡き年も暮れゆかむ
春迎ふ家族そろひて猫は膝 真砂
三段切れでリズムがぎくしゃくしているので、次のように整理しては如何でしょうか。こうすれば猫も家族の一員というのが分かると思います。
(添削) 初春の家族そろひて膝に猫
魚河岸の年の瀬馳せるターレかな 徹
年の瀬の忙しい魚市場の様子が目に浮かびます。
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第20回「蘇鉄の会」互選結果 ( )内数字は得票数
兼題「雑煮」
お雑煮や瀬戸の香残るいりこ出汁 (3) 博石
憂きことも佳きこともあり雑煮食ふ (2) 龍彦
母作りし丸餅雑煮懐かしき (1) 孝枝
雑煮こそ白味噌仕立て京(みやこ)なれ (1) 真砂
故郷の雑煮懐かし餡子餅 良
この味に舌鼓する雑煮かな 南行
初雑煮搗きたる餅の今むかし 徹
当季句
犬引きて犬に引かれて冬の朝 (4) 南行
穭(ひつじ)田(だ)に石投げてみる初氷 (3) 博石
魚河岸の年の瀬馳せるターレかな (3) 徹
薄の穂水面を荒らす鳥羽の雨 (2) 南行
人待ちの上野駅舎に寒すずめ (2) 真砂
「駅馬車」に思ひ出尽きぬ夜長かな (1) 博石
若き日のセーター解きて糸となる (1) 孝枝
冬空に飛行機雲一直線 (1) 良
冬木立電飾の枷かがやかせ (1) 孝枝
つかの間の心に染みる冬夕焼 (1) まさ
友逝けり君亡き年も暮れゆかむ (1) 龍彦
几帳面元旦に咲くシクラメン (1) 良
いつの間にセーターの胸乙女さぶ (1) 孝枝
木枯らしや風船のごと枯れ葉舞う (1) まさ
鳥三羽木守りの柿に集いをり (1) 龍彦
寒き朝横目で睨む雀かな 南行
Go To の旅はいずこへ月望む 徹
急激に体に堪へる冬が来た 良
ささ鳴きや小枝を揺らす訪問者 まさ
春迎ふ家族そろひて猫は膝 真砂
円空仏供へる柿は一つなり 龍彦
山粧ふ心粧ふと異ならず 博石
人だかり園池の亀の日向ぼこ 徹
あかねさす朝の斑(むら)雲(くも)大晦日 真砂
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【講 評】
城下洋二 講師
俳句の主な要素は素材、構成、表現です。
いい素材(テーマ)でも構成によって読者へのインパクトが違いますし、表現によって訴える力が変わります。
素材が一番際立つ構成と表現を磨いてください。
そのためには「懐かしい」ならどんなことが懐かしいのか、「思い出す」ならどんなことを思い出すのかを明確にすることが大事です。
抽象的でなく所謂「ものに語らせる」ことが大事です。
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晴天の日枝神社 令和四年元旦
野川の雪景色
円空物と柿
木守 鳥三羽
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第21回「蘇鉄の会」ご案内
日時:2022年4月9日(土)12:00~
御題:兼題「蛙」1句及び当季句3句 計4句
選評講師:城下洋二先生
集合場所:築地フェリック社 11:30集合
「ボンマルシェ」(イタリアンレストラン)へ移動
投稿締切:2022年4月2日(土)
投稿方法:兼題1句と当季雑詠3句
※あらかじめメールにて上記締切までに俳句の投稿を受け付けます。
下記メールアドレス迄お送り下さい。
sato-nagashima@coast.ocn.ne.jp
ワード文書でファイル添付又はメールべた打ちでもOK。
「蘇鉄の会」参加申込:上記メールアドレスにお申込み下さい。
年会費:5,000円(振込先は別途ご案内)
(2021/10/17) 担当:長島 公子 (事務局、19期)
俳句同好会 第19回「蘇鉄の会」報告
令和3年10月2日(土)、今回もWEB開催となった「蘇鉄の会」でした。外出自粛を余儀なくされる日々も長くなりましたが、そのような中で俳句を詠むことが、心をのびのびとさせてくれる思いがけない効果があることに、改めて気付かされます。
今回の参加は、講師を含む投稿者9名、全36句です。
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【選評と講評】 城下洋二 講師
≪兼 題≫
「霧」
<特選>
朝まだき霧笛幽かに夢に聞く 龍彦
夢うつつの中で聞く霧笛、旅情を感じます。
<並選>
霧晴るる沖の船場に鴎舞ひ 徹
船場は波止場のことなので、「沖の船場」は違和感があります。船場を網場もしくは漁場 としたら如何でしょう。
霧が晴れてくると、沖の漁場に鴎が群れており、魚群が来ている、今日も豊漁だといった 情景になります。
(添削) 霧晴るる沖の網場に鴎舞ひ
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≪季 題≫
<特選>
太陽のいつぱい詰まる柘榴の実 博石
柘榴の真紅の実を見ていると太陽の光が詰まっているようですね。見事な比喩です。
子規球場塁を巡るはアキアカネ 真砂
上野の子規球場、人気ない塁上に赤蜻蛉が群れている情景です。秋晴れの澄んだ空気とそこはかとない秋の寂しさを感じるのは私だけでしょうか。
正岡子規の句に
赤蜻蛉筑波に雲もなかりけり
というのがあり、その句を重ねて読めば、重層的に読解できるところが面白いと思います。
新しき郵便受けに秋の雨 真砂
なんでもない光景ですが、真新しい郵便受け、銀色のものでしょうか、それとも塗料も新しい木箱か、それに秋の雨が当たり、水玉ができ、光っています。何かいい知らせでも運んできそうな気さえしてきます。日常のちょっとした心の弾みがさりげなく詠まれています。
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<並選>
縁側に蝉の亡骸日は陰り 徹
詠んでいる情景は眼に浮かびますが、「亡骸」と「日は陰り」の取り合わせは暗くなりすぎます。「日は陰り」を夕日の射した光景に変えたら光と影の対比が明瞭になります。
(添削) 縁側に蝉の亡骸夕日濃し
叱られて瀬戸の港の秋夕焼け 龍彦
叱られて家を飛び出し、埠頭で秋の夕焼けを見ている少年のやるせなさが伝わってきます。
糸瓜忌や我いつまでも伊予訛 孝枝
糸瓜忌と伊予訛の取り合わせはいいのですが、俳句は基本的に一人称の文学なので「我」は不要です。これを省くとぎくしゃくした日本語が滑らかになります。
(添削) 糸瓜忌やいまでも残る伊予訛
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第19回「蘇鉄の会」互選結果 ( )内数字は得票数
兼題「霧」
朝まだき霧笛幽かに夢に聞く (4) 龍彦
霧せまり行き交ふ人みなしかめ面 (3) まさ
霧深き比叡の山に若き君 (1) 南行
霧晴るる沖の船場に鴎舞ひ 徹
人の世は諸行無常や霧の中 博石
大山に霧立ち上る雨上がり 良
朝霧に守られ帰る家出の孫(こ) 真砂
当季雑詠
糸瓜忌や我いつまでも伊予訛 (4) 孝枝
子規球場塁を巡るはアキアカネ (4) 真砂
友の逝く無聊の日々や夏去りぬ (3) 徹
太陽のいっぱい詰まる柘榴の実 (3) 博石
叱られて瀬戸の港の秋夕焼 (2) 龍彦
野に遊びふるさと恋し曼殊沙華 (2) まさ
稲架組みて天日に晒す稲穂かな (2) 博石
遠浅の潮満ちきたり大夕焼け (1) 龍彦
寅さんのごと仰向きて見る月見草 (1) 博石
縁側に蝉の亡骸日は陰り (1) 徹
満月や眩しき窓辺秋の風 (1) 南行
風さやか銀杏ひろい散歩道 良
汗ばみて日陰を抜ける初夏の風 南行
初秋の空山城の天守閣 孝枝
一斉に香り漂う金木犀 良
日足伸び暮るる日々や秋近し まさ
無縁坂儚き想ひの雁渡る 真砂
音絶えて梵鐘幽か秋の暮れ 龍彦
台風一過競り落とされし柘榴かな 南行
秋深し檸檬の香マティーニ 良
二科展やデフォルメの顔誰かに似て 孝枝
獺祭忌偲んでまつるはじき豆 まさ
秋彼岸宿す想ひは山野越へ 徹
新しき郵便受けに秋の雨 真砂
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【講 評】 城下洋二 講師
季重なり(季跨り)の句が二十四句中七句ありました。
季重なりを一概に駄目とは言いませんが、推敲すれば別の表現できるものがほとんででした。
例えば「月」と言えば秋で他の季節の月は「春の」とか「冬の」とか形容詞をつけるのが俳句の約束ですので「秋」の形容は不要です。
俳句は十七音しか使えませんのでなるべく重複表現を避け、季語を生かして表現したいことを十分に詠んでください。
季語か季語でないかを簡単に調べる方法があります。歳時記もしくは季寄せの総索引を調べることです。
総索引は五十音順に季語が並べてありますので、そこで季語を調べて、季節を確かめてください。
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第20回「蘇鉄の会」ご案内
日時:2022年1月8日(土)
御題:兼題「雑煮」1句及び当季雑詠3句 計4句
選評講師:城下洋二先生
集合時間及び場所:未定
投稿締切:2022年1月3日(月)
投稿方法:兼題1句と当季雑詠3句
※あらかじめメールにて上記締切までに俳句の投稿を受け付けます。
下記メールアドレス迄お送り下さい。
sato-nagashima@coast.ocn.ne.jp
ワード文書でファイル添付又はメールべた打ちでもOK。
「蘇鉄の会」参加申込:上記メールアドレスにお申込み下さい。
年会費:5,000円(振込先は別途ご案内)
(2021/06/16) 担当:長島 公子 (事務局、19期)
俳句同好会 第18回「蘇鉄の会」報告
未だ緊急事態宣言下の東京都、令和3年6月5日(土)に開催を予定していた第18回「蘇鉄の会」でしたが、新型コロナウイルス感染症収束の見通しのない状況が続いているため、今回もWEB上での開催となりました。
対面でのコミュニケーションが制約される毎日が続いておりますが、「俳句」は無限のイマジネーションの世界……。「五・七・五」は、多彩に多様に縦横無尽の拡がりと繋がりを生み出します。
全国の松山北高校同窓生の皆様、どうぞお気軽にご参加ください。
今回の参加は、講師を含む投稿者9名、全36句です。
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【選評と講評】 城下洋二 講師
<特選>
校庭に生徒整列楠若葉 孝枝
楠若葉でいかにも元気溌剌な生徒が想像できます。そして説明的でなく、
一読、初夏の学校の風景が見えてきます。
どくだみの匂ひ仄かに雨上がり 南行
雨上がりの情景を匂いで表現したところが素晴らしい。
雨上がりの十薬の白い花の咲き乱れた光景が目に浮かびます。
手植えする泥田の水の輝けり 真砂
気持のいい句。現代では手植えする田は棚田か催事の田ぐらいでしょうが、
田植えする姿と見事に晴れ渡った空が見えてきます。
花冷えや柱に残る背比べ 博石
花冷えという季語で背比べをした子供たちがもう大きくなったのが感じられ
ます。柱の傷を見て、幼い頃の自分或いは子供たちの記憶をよみがえらせて
いる作者のちょっと感傷的な心象風景が感じられます。
<並選>
薫風や母校の校歌口ずさみ 孝枝
薫風の爽やかさにふと青春時代を懐かしみ、校歌を口ずさむ。分かります。
春の野にスマホ持ち出し花の名を 良
花を写すと名前が分かるアプリ、便利です。現代の一風景。
路わたるカルガモのごと園児らは 龍彦
可愛らしい風景ですが、カルガモでは大人の鴨も指しますので、カルガモの子
とはっきり書きましょう。
(添削) 路わたる軽鴨(かる)の子に似て園児らは
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兼題「蝸牛(かたつむり)」
【講師選】
生垣や昔は良く見しかたつむり 良
生垣も少なくなりましたが、蝸牛もとんと見かけません。
生垣と蝸牛の取り合わせが懐かしい。
天守閣石垣攻めや蝸牛 真砂
天守閣の石垣を這う蝸牛を見て「石垣攻め」と大げさに表現したところが
面白い。ただ「天守閣石垣」では日本語としてなじまないのでここは上五
を字余りにして「天守閣の」と「の」を入れた方がいいと思います。
(添削) 天守閣の石垣攻めや蝸牛
かたつむり足跡残しかくれんぼ まさ
蝸牛の這った跡を見て、かくれんぼしていると発想したところが素晴らしい。
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講評
全体的に説明的な句が少なくなってきました。そして季語に心情や情景を語ら
せる句が多くなってきて、句に奥行が出てきております。次回が楽しみです。
※ 次回の兼題は、「霧」です。
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第18回「蘇鉄の会」互選結果 ( )内数字は得票数
兼題「蝸牛」
蝸牛狭庭の主のまだ現れず (4) 孝枝
背に重荷人の人生蝸牛 (1) 博石
雨上がり何処に隠れた蝸牛 (1) 南行
かたつむり足跡残しかくれんぼ (1) まさ
天守閣石垣攻めや蝸牛 (1) 真砂
生垣や昔は良く見しかたつむり 良
蝸牛雨後の一途は君の世ぞ 徹
カタツムリ我も迷いて歩みし春を 龍彦
当季雑詠
野球の子透き通る声夏来たる (3) 博石
どくだみの匂ひ仄かに雨上がり (3) 南行
宇宙の理赤く満ちたる夏の月 (3) 真砂
手植えする泥田の水の輝けり (3) 真砂
花冷えや柱に残る背比べ (2) 博石
校庭に生徒整列楠若葉 (2) 孝枝
路わたるカルガモのごと園児らは (2) 龍彦
万緑や紅一点の美しさ (1) まさ
山法師みどりに純白散歩道 (1) 良
これはまあ巨き桑の実石垣に (1) 龍彦
薫風や母校の校歌口ずさみ (1) 孝枝
風に舞う朝陽を浴びて鯉のぼり (1) 南行
庭隅に鉄砲百合のぱんと咲き (1) 真砂
パレスチナ永遠の契りを五月雨 徹
ほうき草コキアと名乗り人気者 良
神苑は緑を違え静もれり 孝枝
春の野にスマホ持ち出し花の名を 良
到来物今宵は皆と筍飯 徹
時移り草木もみんな衣替え まさ
冬超えて羽化せしアゲハ放ちけり 龍彦
ゆりかもめそっと寄り添い春の川 南行
養花天一日も長く花見酒 まさ
思い出は遠退くばかり月朧 徹
「地獄組」匠の技や山笑ふ 博石
第19回「蘇鉄の会」ご案内
日程:2021年10月2日(土)
御題:兼題「霧」1句及び当季雑詠3句 計4句
選評講師:城下洋二先生
投稿締切:2021年10月2日(土)
投稿方法:兼題1句と当季雑詠3句
講評・選評:WEBにて受付の後、講評・互選結果発表
※メールにて上記締切までに俳句の投稿を受け付けます。
下記メールアドレス迄お送り下さい。
sato-nagashima@coast.ocn.ne.jp
ワード文書でファイル添付又はメールべた打ちでもOK。
「蘇鉄の会」参加申込:上記メールアドレスにお申込み下さい。
年会費:5,000円(振込先は別途ご案内)
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